西准教授らが解明したDNA修復の新しい制御機構に関する論文がJournal of Biological Chemistry誌に掲載されました!
生命医薬コースの西准教授らはDNA修復の新しい制御機構を解明しました!DNA二本鎖切断は、ゲノムに生じるDNA損傷の中でも最も重篤なものです。DNA二本鎖切断の修復過程においては、一時的にDNA-RNAハイブリッドを含む構造が形成されることが分かっており、その形成と解消の厳密な制御はゲノム安定性の維持に重要なイベントで、近年特に注目を集めています。ヒト細胞におけるDNA-RNA ハイブリッドの解消にはいくつかの機構が存在しますが、西准教授らはDNA-RNA helicaseと呼ばれる、DNAとRNAを分離させる活性を持つ酵素に着目し、これまでにDNA-RNA helicaseの一種であるDHX9タンパク質がDNA二本鎖切断の修復経路である相同組換え修復に促進的に機能することを明らかにしてきました。一方で、DHX9の機能がどのように制御されているかは解明されていませんでした。今回の研究では、まず、DNA二本鎖切断の発生後にDHX9はATMと呼ばれるリン酸化酵素によってリン酸化を受けることを示しました。さらに、このリン酸化はDHX9をDNA二本鎖切断部位に安定に係留することには必要ですが、その下流で機能する因子であるBRCA1との相互作用とBRCA1のDNA二本鎖切断部位への動員には阻害的に働いてしまうことを見出しました。このことは、厳密かつダイナミックなDHX9のリン酸化状態の変化が、DNA二本鎖切断修復の制御に重要であることを示唆しています。本研究で解明した新たな機構が、抗がん剤の新たな創薬ターゲットとなることが期待されます。
著者:Saaya Matsuya, Yuina Tsuchiya, Yudai Hiwatashi, Yurina Abe and Ryotaro Nishi *
タイトル:DHX9 phosphorylation at S321 by ATM regulates DHX9 retention at DNA double-strand break sites and interaction with BRCA1
掲載雑誌:Journal of Biological Chemistry, 301, 110526, 2025
URL:10.1016/j.jbc.2025.110526